町内会等への名義書き換え

2016 年 10 月 28 日 金曜日 投稿者:mituoka

平成3年4月に地方自治法の一部が改正され、一定の手続きにより町内会等の地縁団体(以下、町内会等という。)が法人格を取得し団体名での不動産等の登記ができるようになりましたが、それ以前は町内会等の名義での不動産登記は認められていなかったので、町内会等が所有する集会所等に関しては、当該町内会等の代表者等の個人名、あるいは町内会等に所属する方々の共有名義でなされていました。そのため、町内会が法人格を取得しても、当該名義人らの死亡等により相続が発生し、不動産の名義を町内会へスムーズに書き換えることができない問題が起きています。

そこで、平成27年4月1日に地方自治法が一部改正され、町内会等が所有する不動産で一定の要件を満たす場合、町内会等が所定の手続きを経ることで、町内会等単独で所有権の保存または移転の登記を可能にする特例制度が創設されました。

申請の要件として、以下の4つが挙げられています。

  1. 町内会等が当該不動産を所有していること。
  2. 当該不動産の「表題部所有者」または「所有権の登記名義人」(以下「登記関係者」とする)の全てが、その町内会等の「構成員」または「構成員であった者」であること。
  3. 当該不動産が、当該町内会等によって、10年以上所有の意思をもって平穏かつ公然と占有されていること。
  4. 登記名義人または相続人の全部または一部の所在が知れないこと。

個人的には、4つめの「登記名義人または相続人の全部または一部の所在が知れないこと。」が、この新制度を使いにくくしているような気がします。実務上、相続人等が印鑑を協力をしてくれないからスムーズに事が運ばないのであって、登記名義人(または相続人)の「所在」そのものは把握できているケースがほとんどだからです。実際にこの新制度を使って、町内会等へ名義を書き換えた例はあるんでしょうか。少なくても私は今のところ聞いたことがありません。(不勉強だったらすみません。)

私は個人的に、上記新制度よりも、「委任の終了」を登記原因として認可地縁団体に所有権の移転の登記をすることの可否について(通知)(平成22年12月1日付法務省民二第3015号)のほうが、使い勝手がいいような気がします。この通知というのは、要するに、①認可町内会等の代表者が既に死亡②当該代表者のうち一部の相続人を被告として、「委任の終了」を登記原因とする所有権移転登記を求める訴訟が提起され、これを認容する判決が確定した場合に、この判決正本を添付しての登記申請は認められる・・・というものです。普通に考えれば、この判決においては相続人全員の登記申請意思を擬制できないから、それに基づく登記は認められないようにも思います。やはりこの通知は、町内会等の不動産登記に関する問題を一気に解決するための「バズーカ」だったのでしょう。何にしてもこの扱いは嬉しいものです。

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