野球の華 ホームラン(カーク・ギブソンのthe home run) 

2010 年 8 月 23 日 月曜日 投稿者:mituoka

 華麗な放物線を描いた打球がスタンドに消えていく

 一挙に大量点をゲットし、一瞬で試合の流れを変える

 他のスポーツにはないスリルと興奮がそこにある

 ホームランは野球の華だ

 長年、野球を見続けきたが、ホームランの醍醐味を最も端的に教えてくれたのは、1988年のワールドシリーズ第1戦でドジャースのカーク・ギブソンが放ったサヨナラ・ホームランだった

 その年、ナ・リーグMVPに輝いたギブソンの攻守に渡る活躍でリーグ王者になったドジャースだったが、ワールドシリーズの相手はアスレチックス

 当時のA’s(アスレチックス)はカンセコとマグワイアが形成する「バッシュブラザーズ」を擁し、飛ぶ鳥を落とす勢いがあった

 それに対しドジャースはギブソンが足の故障で戦線離脱を伝えられ、圧倒的にアスレチックス有利の下馬評だった

 迎えたシリーズ1回戦

 アスレチックス・カンセコの満塁ホームランで逆転されたドジャースは3-4とリードされたまま9回裏の攻撃に入った

 2アウト・ランナー1塁の場面

 出場絶望と言われていた主砲カーク・ギブソンが、なんと!代打で登場

 しかし、打席に向かう仕草から、歩くこともままならない重症だと一目でわかった

 どよめくスタンド

 相手投手は、後に殿堂入りを果たすリリーフエースのエカーズリー

 こんな半病人状態のギブソンに、彼を打ち崩すチャンスなどあり得ないはず(だった)

 痛みと戦い、顔を歪め、必死に空振りとファールを繰り返し粘るも、打球が前に飛ぶ雰囲気など感じられない

 空振り三振、ゲームセット! の声を聞くのは時間の問題と思えた

 カウント2-2(だったと思う)、エカーズリーが投じた「伝家の宝刀」スライダー

 それを左打者のギブソンは、右腕一本で引っ掛け、ライトスタンドへ運んだ

 奇跡の代打逆転サヨナラ・ホームラン!

 やはりよほどの重症だったのだろう、小刻みにピュコピョコと飛び跳ねながらダイヤモンドを1周するギブソン

 騒然とする地元ドジャースタジアム

 2塁を回る手前あたりで、ギブソンは自軍ベンチに向かい右手で何度もガッツポーズをした

 明日以降の戦いはお前たちに任せたぞ! というメッセージだったように思う

 このシリーズでギブソンが出場できたのは、わずかその1打席

 しかし勇気を与えられたドジャーたちは、4勝1敗でアスレチックスを降し、ワールド・チャンピオンに輝くのである

 あれほどまでに感動的な野球シーンを私は知らない

 試合の流れどころか、シリーズの流れを一瞬で変えたあのホームランこそ、

 まさに THE HOME RUN と呼ぶにふさわしい

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